2026 鈴鹿8時間耐久ロードレースレポート【TONE Team4413 BMW】
鈴鹿8耐、激闘と執念の完走劇
世界耐久選手権シリーズ第3戦となる鈴鹿8時間耐久ロードレースが開催された。ライダーは星野 知也選手に加え、全日本ST600クラスに参戦している長尾 健吾選手と、2026年EWC初戦ル・マン24時間レースでのSSTクラスウィナーでもある若手ライダーマテ・サマド選手を迎えてSSTクラス優勝に挑んだ。マテ選手は5月の事前テストに参加する事ができなかった為、鈴鹿8耐ウィーク6月30日(火)と7月1日(水)のテストが当チームでの初走行となった。
| 大会名 | 2026 FIM 世界耐久選手権シリーズ 第3戦 “コカ・コーラ” 鈴鹿8時間耐久ロードレース 第47回大会 |
|---|---|
| 開催期間 | 2026年7月3日(金) 〜 7月5日(日) |
| 開催場所 | 鈴鹿サーキット (1周 5.821Km) |
| 観客動員数 | 3日間合計 59,000人 |
| クラス | SSTクラス |
| チーム・マシン | TONE Team 4413 BMW (BMW M1000RR) |
| ライダー | 星野 知也 / 長尾 健吾 / マテ・サマド / 吉田 愛乃助(急遽ヘルパーから代役参戦) |
このテストで星野選手と長尾選手はセッテイングの確認等を行いながら走行し、鈴鹿を初めて走ったマテ選手は周回を重ねながら徐々にタイムアップしていき、他の2人とさほど変わらないタイムをマークすることができた。テスト2日目の午後はあいにくの雨となったが、決勝日が雨となる確率が高かった為、レインセッテイングを詰めることができた。また、今年もゼックが通訳として参加、吉田選手はライダーのヘルパーとしてスタッフに加わり7月2日(木)の公式車検を経て、公式予選を迎えた。
7月3日(金)予選:相次ぐ転倒と苦渋の決断
予選順位を決定する方法は各チームの登録ライダー(ブルー/イエロー/レッド)が2回ずつの公式予選で記録したベストラップタイムのうち、上位2名の平均タイムを算出して決定する。11位以降はこの予選で確定するが、上位10台の順位は予選2日目に行われるトップ10トライアルで最終的に決定される。今年のSSTクラスのエントリーはEWC年間エントリーチーム5台を含めて15台、EWCシリーズ戦は4戦のみである事からシリーズランキング上位のチームはほぼ参戦している。SSTクラスのレベルは年々高くなり、昨年以上に熾烈な戦いとなる事が予想された。
朝のフリー走行はマテ選手、長尾選手、星野選手の順番で走行したが、星野選手は2回目のピットアウトラップの最終コーナ立ち上がりでリアが芝に乗り転倒してしまう。ライダーは大きなケガは無かったもののマシンのダメージは大きく、午後の予選に間に合わせる為、メカニックは全力で作業にとりかかった。そしてマシンは見事に修復され、午後12時から1回目のブルーライダー予選が開始、星野選手はまず確認走行をしてピットイン、リアタイヤを交換し2周目に2’09.423をマーク、タイヤ温存の為走行を終了してSSTクラス9位。
イエローライダー予選ではマテ選手が2周目に2‘11.578を出した直後に赤旗中断となる。再開後に更なるタイムアップを狙ったが、5周目の200Rでハイサイドによる転倒をしてしまった。自力でピットに戻ってきたものの右肩を負傷してしまう。そしてレッドライダー予選は10分遅れで始まった。通常では予選までTカーで走りメインカーを温存しているのだが、マシン修理が間に合わない為、長尾選手はメインカーで出走した。攻める走りはせず4周目に出した2’10.038がベストタイムとなりSSTクラス8位。ピットウォークを挟んで行われた2回目の予選では、転倒した星野選手とマテ選手の身体への影響を考慮し、チームは両選手を走らせず体の回復を優先する判断を下した。長尾選手が走る2回目の予選時間帯は昼間に比べるとタイムを出しやすいコンディション、まず4周を走り予選用タイヤに交換してピットアウトするが赤旗となってしまう。再開後の3周目に2’08.758ををマークするも次周のデグナーカーブで止まり切れず、タイヤバリアに接触して転倒、右肩を脱臼してしまった。予選結果としては星野選手と長尾選手のベストタイム平均は2’09.090となり、SSTクラス9位(総合37位)から決勝レースを戦う事が決まった。
鈴鹿サーキットの路面改修により、全体的にタイムアップしているが、耐久レースは一発の速さを競うものではなく、チームは決勝を見据えてマシンのセットアップを進めてきており、この予選結果は全く問題ない。大きな問題は3人のライダーが全員転倒してしまい、星野選手を除く2名の負傷状態が思わしくなく、この時点で長尾選手の出場は困難と判断された。マテ選手についても夜間セッションの走行は見送り、土曜日昼のフリー走行で状態を確認する必要がある状況となっていた。こうした事情を受け、チームは急遽、長尾選手の代役として吉田選手を出場させる為の申請を進め、運営側の審議結果を待つこととなった。そして、夜間走行は1周でも走らなければならない義務が有る為、星野選手が4周のみ走った。
7月4日(土)予選2日目:TOP10トライアル
TOP10トライアル前のフリー走行開始時は曇り、まず星野選手が3周走りマテ選手に交代したが、痛みが強くブレーキングができないという事で2周走っただけで走行を終了した。そして審議の結果、正式に出場が認められた吉田選手が走行を開始。雨が降り始めたためレインタイヤへ変更し、トータル11周の走行を行ったところでセッションを終えた。吉田選手にとっては5月の事前テスト以来の走行となり、今年の8耐仕様マシンのフィーリングを改めて確認しながらの走行となった。マテ選手の状況を見て、チームは安全を最優先し欠場させる判断を下した。これにより、決勝レースは吉田選手と星野選手の2名体制で挑むこととなった。
7月5日(日)決勝レース:豪雨の中、一人で繋いだチェッカー
迎えた決勝レースは朝から雨となり、朝のフリー走行では星野選手がクラストップ(総合9位)のタイムを出し、吉田選手もまずまずのタイムで走り決勝レースを迎えることとなった。スタート進行の時間帯は雨が止んでいたものの、依然として路面はウエットコンディションのままでレースはスタート、スタートライダーの星野選手は1周目で大きく順位を上げてクラス5位で戻ってくる。4周目には前を行く#25 Team Étoileをパス、#41 Dafy-kaedear-RAC41-Honda、#52 NCXX RACING with RIDERS CLUB、#36 3ART Best of Bike Hamaguchiに続くクラス4位(総合22位)となった。レース序盤から転倒車が相次ぎコース上にオイルが点在する状況となっていたが、13周目のシケイン手前で星野選手もオイルに乗り転倒してしまう。直ぐにマシンを起こしコースに戻ろうとしたが、オフィシャルからピットロードへと促され、ピット前を通過してクラス10位でコースへ復帰した。オイル処理の為14周目からSC(セーフティカー)ランとなり、その間に再び雨が降り始める。SCは24周目まで続き、SC終わりのリスタート後にクラス7位へポジションを上げた。
26周目にピットイン、マシンの損傷はほとんど無かった為、ルーティンのタイヤ交換と給油を済ませて吉田選手に交代した。吉田選手は無理せず安定したタイムを刻みながらクラス8位を走行していたが、転倒車が出た事で34周目に再びSCが入った。雨量が多くなり、視界も良くない中での走行となったが、45周目のSC解除後、#25(ピットインのタイミングでSCが出てしまいピット出口で止められ順位を落としクラス9位となっていた)と僅差での争いを展開していた。そんな矢先、レーススタート時のフライングによるライドスルーペナルティが出てしまい、54周目にピットインして消化する事となった。
56周目にピットイン、タイヤ交換と給油て星野選手に交代しクラス10位でコースに戻った。このスティントで星野選手はEWCクラスのタイムに迫る勢いで周回し、59周目に#83 Team38、66周目に#64Kawasaki Plaza Racing Teamを交わしてクラス8位(総合29位)となった。しかし68周目の2コーナーで転倒をしてしまい、サーキットメディカルから、脳震盪を起こしていた為病院へ搬送された。この時点で走れるのは吉田選手一人となり、残り4時間を単独で走り切るのは危険を伴うため、チームはリタイヤという選択肢も考えた。しかし吉田選手の一人でも走ると言う強い気持ちを受け、監督とチーフメカニックが協議の末、完走を目指して走ってもらう決断をした。
完走扱いとなるにはトップ周回数の75%をクリアすることが条件となる。残り4時間でトップがどこまで周回を伸ばすかによって吉田選手の周回義務も変わるため、コンディション維持を優先し、休息を挟みながら走らせる方針を取った。そして戻ってきたマシンの修復作業をメカニックスタッフは迅速に行い、20分足らずで吉田選手をコースに送りだした。
吉田選手は断続的に降り続ける雨の中で、細心の注意を払いながらも力強い走りを見せた。そして95周目にピットイン、ルーティンのタイヤ交換と給油を終えてダブルスティントを敢行。2本目の走行も安定したタイムを刻み125周を終えてピットイン。ここでトップの周回数を確認、吉田選手の義務周回数を計算して休息時間を決定、再コースインは18時20分とした。吉田選手は断続的に降り続ける雨の中で、細心の注意を払いながらも力強い走りを見せた。そして95周目にピットイン、ルーティンのタイヤ交換と給油を終えてダブルスティントを敢行。2本目の走行も安定したタイムを刻み125周を終えてピットイン。ここでトップの周回数を確認、吉田選手の義務周回数を計算して休息時間を決定、再コースインは18時20分とした。
30分の休息時間にコンディショニングスタッフの手厚いケアを受けて疲労を回復した吉田選手は、チームスタッフに見送られ最後の走行に挑んだ。夜間走行では波乱が起きる事が多い鈴鹿8耐、ライダー自身が気を付けていてもトラブルに巻き込まれる可能性が高くなる為、吉田選手は慎重に周回を重ねていた。雨量が多くなり転倒車が出た事で139周目に3回目のSCが入った。結局最後までセーフティカー先導の走行となり、吉田選手は148周目でSSTクラス15位(総合45位)でチェッカーを受けた。SSTクラス優勝を果たせなかった悔しさはもちろん有るものの、最後まで諦めずに完走できた事は困難続きだったレースウィークを思えば、ひとつの安堵を感じさせる結果となった。