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2023.10.31 SUPER GT

予選5位 決勝6位 【谷口信輝選手】

2023年のSUPER GTも残り2戦。GOODSMILE RACING & Team UKYOの今季はそれぞれのレースで確実に強さは見せるものの何かが噛み合わず、ここまで表彰台の無い苦しいシーズンとなっている。だが、直近2戦は連続で5位に入賞しており、勢いは悪くない。今度こそ表彰台に乗る事を誓ってチームはこの九州ラウンド、オートポリスに乗り込んできた。
今季も大分県日田市のサーキットは、シリーズ全8戦のうち第7戦に据えられ、戦績に応じて課されるサクセスウエイト(SW)が半減される。このレースでシリーズチャンピオンが決するシーズンも少なくなく、ポイントランキングのトップグループには天王山となるレースにもなるが、今シーズンこの時点でのGOODSMILE RACING & Team UKYOのポイントランキングは14位と、チャンピオン争いには絡めていなかった。
九州の山間にあるこのトラックは本州のサーキットと比較して利用者が少ないせいか路面がダスティーで荒いと言われており、タイヤ攻撃性が高いトラックとしても知られる。さらに今回のレースは、昨年より導入された給油義務2回の450kmのレースフォーマットがオートポリスで初めて適用される為、各チームとも戦略に頭を悩ませていた。
4号車の今回のBoP(性能調整/バランス・オブ・パフォーマンス)は前戦とエアリストリクターは変らないものの、重量は+5kgの45kgを搭載し、車両重量は1330kgとなる。そこに獲得ポイント×1.5kgの23kgのSWを搭載して戦う。

10月14日(土)【公式練習、公式予選】
天候:曇り コース:ドライ 気温/路面温度 GT300 Q1開始時 18℃/25℃ Q2開始時 17℃/22℃

午前9時25分、公式練習が開始され、4号車は谷口のドライブでコースインした。

明け方に阿蘇地方に降った雨の影響で路面はダンプ。加えて、気温16度、路面温度は18度という想定外の低温条件も重なり、難しいコンディションでのセッションスタートとなった。4号車は路面状況が改善するまで30分ほどピット待機してからコースインした。
多少路面が改善したとは言え、想定外の冷たい路面は変わらず、冷えたタイヤでの走り出しは難しく、谷口はターン1でオーバーランしてしまう。その後、更に慎重に周回を重ねた谷口は、路面改善と共にタイムアップを進め、計測8周目に1分44秒975の自己ベストを記録して計時時点で4番手へ。セッション開始約1時間のタイミングで片岡選手に交替した。
片岡選手は決勝レースを想定した満タン状態でのバランス確認も行い、1分40秒台後半のラップを重ねる。セッション終盤、GT300クラス占有走行前にチームは片岡選手をピットに呼び戻して、ニュータイヤに交換してのタイムアタックシミュレーションを試みるが、トラフィックの影響で1分45秒894とベストタイム更新には至らなかった。

両ドライバーともに13周ずつ走行してセッション5番手タイムを残す好走であったが、上位3台のGT300規定車両(旧JAF-GT)とのタイム差は非常に大きく、首位のタイムからは同じカテゴリーとは思えぬ1.614秒ものギャップを付けられていた。これらの車輌を上回ることは到底不可能と思われた為、このレースウィークは同じFIA GT3車輌との争いで勝ち抜く事がひとまずのターゲットとなった。
午後3時、公式予選が始まる。気温はあまり上がらず18度と肌寒く、路面温度は25度。今回もランキング順で振り分けられGOODSMILE RACING & TeamUKYOはQ1A組を走る。
Q1のアタックドライバーは公式練習の走り出しとFCYテスト、サーキットサファリでステアリングを握った谷口が担当した。52号車や2号車(muta Racing GR86 GT)の段違いに速いGT300規定車両や、GT3勢の強豪、56号車(リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R)、65号車(LEON PYRAMID AMG)、88号車(JLOC ランボルギーニ GT3)らがひしめく中、Q2進出を勝ち取りに行く。
谷口はセッション開始と共にコースインすると慎重にタイヤの熱入れを行いながらタイムアタックに備えて前後の車輌との間隔を調整した。熱入れを終えると4周目から2周続けてのタイムアタックに入った。谷口の最初の計測は1分44秒196で暫定3番手タイム。続くアタックではそれを上回るペースながら、登り勾配と連続コーナー区間が続くセクター3で、1台前で同じくタイムアタック中の360号車(RUNUP RIVAUX GT-R)に追いついてしまい、1分44秒121と若干のタイム更新に留まった。それでもA組4番手で、見事にQ2進出を決めた。
午後3時53分からのQ2は片岡選手が担当して始まった。セッション開始後、各社が熱入れを終えアタックに入りはじめると、残り2分を切ったところで61号車(SUBARU BRZ R&D SPORT)が1分42秒141と、飛び抜けたタイムを記録して暫定トップとなる。
片岡選手は最初のアタックで1分43秒466と、61号車に続く2番手となる快心のラップを見せるが、すぐに公式練習で異常な速さを見せたGT300規定のマシン達に続々と抜かれていく。31号車(apr LC500h GT)、52号車がそれぞれ2番手、3番手タイムを記録、さらに残り約30秒で2号車(muta Racing GR86 GT)がコースレコードを更新する1分42秒016を叩き出しトップに踊り出たことで、4号車は5番手まで落とされた。片岡選手は続くラップもアタックを続けたが、1分43秒932と自己ベスト更新には至らず、GT300規定車両4台に続く、FIA-GT3規定モデルでは最上位の5番手で予選を終えた。決勝レースは、3列目、5番グリッドからのスタートとなった。
予選後にチームが配信する放送では通常行っている予選日の振返りだけでなく、片岡選手率いるTKRIとGOODSMILE RACINGが協力し、2024年から3年間で女性ドライバー育成を目指す『初音ミク KYOJOプロジェクト(仮称) 』の始動もアナウンスされた。

10月15日(日)【決勝】
天候:晴れ コース:ドライ
気温/路面温度 スタート前(1:25)17℃/25℃ 序盤(14:00)16℃/24℃ 中盤(14:55)17℃/25℃
終盤(16:00)16℃/20℃ ゴール(16:30)16℃/20℃。

日曜日の朝、予報では前日より気温が上がるはずだったが、朝から一帯は厚い雲に覆われ冷たい風が吹き、非常に肌寒いコンディションとなっていた。ピットウォークや航空自衛隊新田原基地所属のF-15航空機によるウェルカムフライトなどのイベントを経て、いよいよオートポリスでは初となる450kmレースがスタートする。
正午からのウォームアップ走行はスターティングドライバーの片岡選手が走行。計測5周目の1分47秒671のベストを記録しながら、低温ドライ路面でのレースペースを確認した。この頃には雲が切れ、時折日が差す様になったものの、ホームストレートに対して追い風方向に強い風が吹き、肌寒さはあまり変わらなかった。
午後1時30分、パレード&フォーメーションラップ開始。この時点で気温17度、路面温度も27度と、前日予選とほぼ変わりない条件でのレーススタートとなった。
片岡選手はシグナルグリーンから5番手のポジションを維持し、後続の88号車(JLOC ランボルギーニ GT3)とのギャップを少しずつ広げていくが、前を行くGT300規定組は驚愕のハイペースで逃げていき、首位との
ギャップは4週目で4.970秒、5周目で8.246秒、6週目で10.541秒とみるみるうちに離され、全く追いつけない展開となった。
6周目には3番手スタートだった31号車が「先頭車両が5周回目の第1SCラインに到達した時点」とされたルールをクリアした段階ですぐ義務ピット消化に向かった為、4号車グッドスマイル 初音ミク AMGは4番手に浮上した。
13周目にランキング2位の18号車(UPGARAGE NSX GT3)が後続車両に追突されグラベルにスタックしFCY (フルコースイエロー)が掲示されるが、SC導入には至らず翌周には解除された。
24周目、27号車(Yogibo NSX GT3)の左フロントタイヤが脱輪。27号車はマシンを引き摺りながらもピットへと向かったが、外れたタイヤがコース脇に残され回収の為に2回目のFCYが掲示される。4号車はその解除直後に最初の義務ピットへ向かう。フルサービスを受けてそのまま片岡選手がダブルスティントに突入。そのピットアウト前にはコース復帰した直後の27号車がふたたびコースオフした為、またもFCYに。これによりアウトラップのウォームアップラップを全車80km/h上限のスロー走行のなかで進めることになり、若干のメリットを得られた。
コース復帰時点で12番手だったポジションは、29周目にルーティンを終えた88号車が2輪交換のみでピットアウトしたことからアンダーカットされる形で先行され、片岡選手はここから10周以上にわたってLAMBORGHINI HURACAN GT3に行く手を阻まれた。

前方がクリーンだったコース復帰直後の2周こそ1分47秒台を刻んだものの、そこから1分49~51秒台と明らかに自身のペースより遅いラップでの周回となってしまう。37周目には一旦前に出られたが、ふたたび抜き返されるドッグファイトが続く。その後、第2ヘアピンでGT500クラス車両がコースオフした事によるFCY発動の直前に、ようやく88号車を仕留めて6番手へとポジションを戻した。40周目にFCYが解除されると、88号車に蓋をされている間にできた前を行く61号車とのギャップを埋めるべく、ペースを上げていった。
45周を終えたところで前方を走る56号車が1回目、52号車、31号車が2回目のピットに向い、これで片岡選手は一気に3番手へ。4号車はこの間も1分48~49秒台で周回を重ね、56周目を終えて61号車が、続くラップで首位の2号車がルーティンに入ったことで、暫定ながら首位浮上を果たした。

迎えた61周目。4号車は片岡選手をピットへと呼び2度目のルーティン作業とドライバー交代を行った。

最終スティントを担当する谷口は、まだタイヤグリップが発動する前のアウトラップで56号車と88号車に先行されてしまうが、ウォームアップ完了後の64周目以降、1分46秒506から46秒704、そして46秒914と立て続けに46秒台をマークし、上位勢に対しても2秒以上速いラップを刻み、66周目に88号車をパスして7番手へポジションを戻した。ここからふたたび56号車の攻略に挑む。
チェッカーの90周目までほぼ1分48~50秒台のラップタイム推移を見せた谷口操る4号車は、70周目前、56号車に1秒未満差のテール・トゥ・ノーズまで追いついていた。「最後の最後まで、最終ラップの最終コーナーまでバトルする感じ(谷口)」となる白熱の終盤ではあったが、残念ながら最後まで抜き去るには至らず。56号車とのバトル中に360号車がピットインしたことで1つ順位を上げ、6番手でチェッカーフラッグを受けた。
56号車は予選でQ1落ちして17番手スタートだったにも関わらず、レース距離ほぼ半分でフルサービスのルーティンピットを済ませ、義務給油回数は終盤に"スプラッシュ・アンド・ゴー"で消化する奇策を打って上位に進出していた。4号車はその後塵を拝する事になった上、目標としていた表彰台にも遠く届かないくやしいレース結果となった。


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