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2022.06.21 SUPER GT

掴みかけたポイントを獲得できず悔しい結果【グッドスマイル 初音ミク AMG】

2022 AUTOBACS SUPER GT Round3 たかのこのホテル SUZUKA GT 300km
予選:5月28日(土)
決勝:5月29日(日)鈴鹿サーキット

5月最後の週末、シリーズ第3戦「たかのこのホテル SUZUKA GT 300km 」が、開催された。

鈴鹿サーキットは、難易度の高いドライバーズサーキットとして世界的に有名で、それ故にタイヤに厳しいサーキットでもある。この週末の天気予報は5月末としては季節外れの暑さになると報じられ、どのチームにとっても難しいレースになる事が予想された。
本戦でのMercedes-AMG GT3に課されるBoP(バランス・オブ・パフォーマンス)は第2戦富士でのΦ36mmから開幕戦岡山と同じΦ34.5mmに戻され、エンジン出力を絞られる。またBoP重量は前戦の55kgから50kgとわずかに軽くなるが、総重量1335kgはいつも通りGT300クラスで最重量だ。4号車初音ミクAMGには、前2戦によるサクセスウエイトの12kgも加わる。車両が重ければその分暑さによるタイヤへの悪影響も強く出やすい。谷口信輝、片岡龍也両選手は、厳しい戦いになる事を覚悟しながら現地入りした。

【5月28日(土)】公式練習、公式予選
天候:晴れ コース:ドライ
気温/路面温度 GT300 Q1開始時28℃/44℃ Q2開始時28℃/38℃ Q2終了時28℃/38℃
土曜日の公式練習は、サポートレースでのアクシデント発生により予定より5分遅れとなる午前9時30分から開始された。セッション開始時点で、気温26度、路面温度36度と早くも夏日の様相。コースオープンとともに、まずは片岡選手のドライブで走り出す。
今回の鈴鹿ラウンドには、コロナ禍による訪日外国人の隔離措置が緩和された事を受けて、メルセデスAMGのカスタマースポーツ部門を担うHWA.AGからエンジニアが2年ぶりに来日し、現場でのリアルタイムなデータ取得と分析、セッティング作業をチームと共に行った。
チームは持ち込んだ2種類のタイヤの確認から開始した。コースに出た片岡選手、まずは最初のタイヤで4周目に1’59.398を出し、続いて2セット目のタイヤでは8周目に1’58.621と、その時点でのトップ10圏内のタイムを出す。その後はアウトインを繰り返しながら頻繁に車両の状況をチームにフィードバックし、いつも以上に入念なセットアップを進めながら、約1時間、18周を走って谷口にシートを引き継いだ。
コースインした谷口は、2分フラットから01秒台の安定したラップを刻んでロングランシミュレーションを行う。10時55分からのGT300クラス専有走行枠を前にニュータイヤを装着すると、アウトラップに続く計測1周目に1分58秒184のベストタイムを記録して8番手を記録し、公式練習を終えた。
引き続き谷口が担当したFCY(フルコースイエロー)のテストを経て、予定より10分遅れの午後2時55分から予選が開始された。GT300クラスのQ1は、A組とB組に振り分けられ、4号車グッドスマイル 初音ミク AMGはB組に振り分けられた。Q1ドライバーは片岡選手が担当し、午後3時13分から10分間の勝負に臨んだ。

午後3時の気温は28度、強い日差しを受けた路面温度は44度だった。高温の路面の影響で、早めにタイヤのグリップ発動を得た片岡選手は、計測2周目でアタックを開始する。セクター1、セクター2と順調にタイムを伸ばしていくが、西コースでわずかながら想定外の挙動変化が起こってしまいタイムロス、1分58秒807と公式練習のタイムを更新出来ないままコントロールラインを通過した。その時点で6番手だったが、ライバル勢のタイムアップに備えて連続アタックへと入る。しかし続くラップタイムは1分59秒196と更新ならず、ライバル勢のタイムアップでみるみる順位を下げ、B組12番手と今シーズン初のQ1敗退となってしまった。
Q2では、最速タイムを記録してポールポジション獲得かと思われた10号車(TANAX GAINER GT-R)に再車検失格の裁定がくだり、最下位スタートになった為、4号車グッドスマイル 初音ミク AMGは22番グリッドから、翌日の決勝レースをスタートする事となった。

【5月28日(日)】決勝
天候:晴れ コース:ドライ
気温/路面温度 スタート前(14:35)30℃/50℃> 序盤(15:00)30℃/50℃> 中盤(15:40)30℃/49℃>
終盤(16:25)31℃/40℃ ゴール(16:45)31℃/38℃。

日曜日は朝から日差しが強く、前日に増して暑くなることが予想された。
サポートレースを終えたのちに開催されたピットウォークでは、いまだ人数制限や選手との接触禁止などの制限措置はかかっているものの、大勢のファンがピットロードとホームストレートを歩いて楽しむコロナ禍以前のSUPER GTの姿が見られた。第2戦のピットウォークでは片岡選手の誕生日を祝ったが、今回のピットウォークでも18日が誕生日だった谷口と、この日に59歳の誕生日を迎えた片山監督の誕生日をお祝いし、大勢のファンがふたりを祝福した。
午後1時10分開始のウォームアップ走行。気温27度、路面温度は50度に到達。スタートドライバーを担当する片岡選手は、決勝レースに向け、4号車グッドスマイル 初音ミク AMGのマシンバランスとタイヤの状況を確認するべくコースへと向かう。
しかしセッション開始12分、20号車(シェイドレーシング GR86 GT)がデグナーカーブを抜けたところでイン側のガードレールに激突して大クラッシュする。このクラッシュ車両回収とコース設備修復の為に赤旗が出たのち、そのままセッション終了という事態になった。4号車もわずか4周を走行しただけで、確認作業を打ち切ることとなった。この復旧作業の為、決勝スタートは10分遅れの午後2時40分からとなった。20号車決勝は決勝レース不出走となり、4号車は21番手スタートと1つ順位を上げるが、荒れたレースを予感させる幕開けとなった。
無事にコース修復が終わり決勝レースがはじまる。気温は30度を超え、路面温度は50度のまま。2周のフォーメーションラップを経て、片岡選手は21番手からいつも通り”攻めのオープニングラップ”を披露する。スプーンコーナー1個目でまず25号車(HOPPY Schatz GR Supra)を捉えて20番手へと浮上する。

直後にGT500クラスでストップ車両が出た為、この日最初のFCY(フルコースイエロー)が宣言される。FCYが1周で解除されレースが再開すると、片岡選手は9号車(PACIFIC hololive NAC Ferrari)に襲いかかり、3周目のスプーン2個目でわずかに膨らんだところを逃さずパスして19番手へ。前を行く52号車(埼玉トヨペットGB GR Supra GT)を追走する。
10周目、最初の転機が訪れる。すぐ後ろを走行していた18号車(UPGARAGE NSX GT3)がシケインへの進入でバランスを崩し、4号車をかすめるようにしてアウト側のクラッシュパッドに突っ込んでクラッシュ。このアクシデントと、同時に他の箇所で発生していたトラブル回収の為にセーフティカー(SC)が導入される。
チームの事前のシミュレーションに基づき、ホームストレートでの隊列整理を経てSCラン中のピットレーンオープンとなった12周目、片岡選手はすぐさまピットへと向かった。コース上がペースを落としているうちにフロントタイヤ2本の交換とわずかにフューエルを足す”スプラッシュ”の作業を済ませ、この後に訪れるドライバー交代の
ルーティン作業を短縮する作戦だ。
作戦はうまくいき、21番手と2つポジションを下げただけでコース復帰した片岡選手は、SC解除後、ライバル勢のペナルティやピット作業の間に毎ラップごとポジションを回復。18周を走り12番手まで浮上したところで、2度目のピットイン、谷口にバトンタッチする。
チームは短い給油と、1度目のピットインで交換していなかったリヤタイヤ2本の交換を済ませて谷口を17番手でコースへと送り出す。谷口は、依然として50度台の路面温度から、「後半みんなが苦しくなるのを待って。僕もなるべくタイヤ温度を上げないように、ブレーキで行かないようにセーブして」タイヤを労りつつ「後半、みんながヘロヘロになったのを喰っていく」作戦で周回を重ねていく。
25周目、またもやアクシデントが発生する。GT500に接触された88号車(Weibo Primez ランボルギーニ GT3)のパーツがコース上に散らばり、デブリ回収の為2度目のFCYが掲示される。ここからレースはますます荒れた展開へ。
26周目にFCYが解除されると、谷口はライバルのピットインで16番手に順位を上げ、33周目には2号車(muta Racing GR86 GT)をパスして15番手へ。続く周回には11号車(GAINER TANAX GT-R)のタイヤ脱落トラブルで14番手と、我慢の状況ながら徐々に順位を上げていく。
さらに35周目、前方で55号車(ARTA NSX GT3)とバトルをしていた65号車(LEON PYRAMID AMG)が130Rで外側にはみ出したところをオーバーテイクし13番手に。
その直後、停止していた車両回収の為にFCYがコールされるが、80km/h制限へのカウントダウンを誤ったGT500車両が244号車に追突クラッシュした為に、2度目のSCが導入されることになった。
41周目にレースがリスタートすると、谷口はストレート速度に勝るNSX GT3の55号車をコーナーで見事に仕留め、上位を走っていた10号車のドライブスルーペナルティにより、ついにポイント圏内のトップ10に浮上した。
しかし「これだけFCYやSCが出ると、みんなのタイヤがまた復活して来ちゃって……」と、厳しい条件ではありながら「もうみんな元気だから、こちらもタイヤ守って待ってる場合じゃない」と、ここからタイヤのグリップを最後まで使い切る覚悟でラストスパートをかける。残り10周を切って2分02秒台後半のペースを連発しながらポジションをキープ。
そして迎えたファイナルラップ。バックストレート走行時点で「背後の55号車は後方で、このまま行けば10位は確実」な状況だったにも関わらず、前方でGT500との絡みで6番手34号車(BUSOU raffinee GT-R)、7番手30号車(apr GR86 GT)、8番手96号車(K-tunes RC F GT3)、9番手60号車(Syntium LMcorsa GR Supra GT)、そして10番手の4号車と後ろの11番手55号車までの5台が団子状態に。
まさに一団となったままシケインに突入すると、ここで谷口は、30号車、96号車とのバトルからシケイン立ち上がりでわずかに失速した60号車に行手を阻まれてしまい、最終コーナーで55号車にイン側に並ばれる。最後は加速力に勝る55号車に立ち上がりで先行され、ゴール直前で順位を落とすことに。55号車にわずか0.048秒差で敗北した4号車は11位でチェッカーを受け、掴みかけたポイントを獲得できず悔しい結果となった。

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