
コードレス製品の開発
TONEの主力製品である「シヤーレンチ/建方1番」から
始まった電動工具のコードレス化プロジェクト。
TONEの「工具」に対する情熱と技術を
注ぎ込んだ製品開発ストーリーをお届けします。

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2004年入社 開発部開発課
藤本 勝弘
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2009年入社 開発部開発課
糀谷 修
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2017年入社 開発部開発課
中村 博紀
プロジェクトの始まり

藤本工具から家電まで、世の中はどんどんバッテリー化が進んでいますし、TONEも現場での使いやすさを重視して既存ラインアップの電動工具を「コードレス化したい!」という思いはずっとあったんです。ただ、コードレス製品で最初の壁になるのは、バッテリーをどうするかという問題。独自のバッテリーを開発するにも、開発に時間がかかってしまううえ、さらに現場のことを考えると、既に持っているバッテリーとは別に、新しいバッテリーを追加してもらうのは「ユーザーライクではないのではないか」という思いもありました。

糀谷そうですね。私たちの中ではやはり、現場でのユーザビリティを第一にしたかったので、既に現場に普及しているバッテリーと共通化して製品を作った方がいいだろうという考えでした。

中村様々な議論を繰り返す中いろいろなタイミングが重なって、このプロジェクトが一気に具体的に前へ進むことになったんですよね。「今だ!」という感じで、みんなが一斉に本格始動に向けて走り始めました。

藤本プロジェクトが本格始動するということで、私がこのプロジェクトの全体統括をさせてもらいました。TONEの主力製品を大きく変えるプロジェクトだったので、かなりプレッシャーは感じましたが、それよりもついに具体的に動き出すことができて嬉しさが大きかったです。電動工具は機械設計と電気設計の大きく2チームに分けられるのですが、今回のプロジェクトでは機械設計を糀谷さん、電気設計を中村さんに担当してもらいました。

糀谷ちょうどその時私は、他の部署から移動してきたばかりで、突然重大なことを任されたので、鮮明に覚えています。(笑) かなり驚きましたが、実はプレッシャーよりも「チャンスがきた!」という感覚の方が強かったです。

中村私もついにこのプロジェクトが進み始めたということで、かなり気合が入っていたのを覚えています。


まず最初に着手したのは、TONEの商品の中でも〝顔〟となっている、電動工具「シヤーレンチ/建方1番」。
世界シェアNo.1のシヤーレンチは、コードレス化の最初に着手する製品にふさわしかったと開発陣は語る。
「これからのTONE」を感じてもらえる設計

藤本一刻も早くコードレスを実現する必要性を感じていたのは、世界の中でも大きなシェアを占め、お客様から「バッテリー式にして欲しい」というご要望もあった「シヤーレンチ/建方1番」。まずは従来の設計プロセス見直しから始め、大幅な納期短縮を図りました。実はこの裏には、先にリリース日を決めてしまっていた、という裏事情があり、早い開発スピードを求められていたんですよね。(笑)

糀谷あの時は特にスピードを上げて開発しましたね。設計プロセスを見直して納期短縮は図れましたが、多くの新しいことへの挑戦が求められました。3D CADで図面を作成するのですが、「いかに現場で使いやすく、かつ、どれだけ効率よく製造が可能か」を常に考えて設計にあたりました。短期間の設計という事に加え、個人的には部署変更直後ということもあり苦労しましたが、チームのメンバー全員でいろいろと意見を出しながら、みんなで乗り切れましたね。(笑)

中村私も横から見ながら「機械設計のチーム大変そうだな」と思っていました。(笑) 製品自体の問題としては、やはり有線タイプからバッテリーに変わることで全体バランスが大きく変わってくるというところでしたよね?

藤本そうですね。バッテリーをどこにどのようにつけるか、かなり迷いました。バッテリーの位置次第で製品の重心が大きく変わるため、作業性の優劣に直結します。この問題に関しては、やはり現場に聞くのが一番だろうということで、何個もモックアップを作成しフィールドテストを行いました。

糀谷この時に大切にしたのは、有線式をご使用いただいているユーザー様がどれだけ違和感なく新しいコードレスタイプに移行してもらえるかでした。ありがたいことですが、既に有線式をご利用いただいているユーザー様が多いため、これまでのタイプの良いところは継承しつつ、より良くなる部分は妥協せず、デザイン・設計をブラッシュアップしました。今後TONEの新しい主力製品になっていくため、「これからのTONE」を感じてもらえる新しいコンセプトで設計しています。

藤本スペックに関しても「絶対に他社に負けるわけにはいかない」ということで重量、回転数、作業性すべてにおいて妥協することなく検討しました。TONEは常に現場での作業性を一番に重視して製品を作り込んでいますし、電動工具メイン機種のコードレス化の第一弾ということで特に気合が入っていました。自信を持って世に出せる製品ができているのではないかと思います。



開発陣の工夫と努力によってリリースされた「コードレスシヤーレンチ」。
無事に先頭ランナーとしてコードレス製品を送り出したが、これはプロジェクトの出だしに過ぎない。
コードレス化第二弾は、問題山積み

中村次にコードレス化に着手したのは「ナットランナー」。トルク管理を行いながらボルト・ナットの締付けを行うことができる電動トルクコントロールレンチです。

藤本この製品はシヤーレンチ以上にハードルが多かった。(笑) まず、新規作成のモーターと制御ドライバーのチューニングがなかなか上手くいかなくて先に進めず。次に、回転スペックを上げるためにモーターを厳しい条件で駆動させたのですが、電流が高くなってドライバーが燃えてしまった。多くのパターンをテストして、最終的に効率の良いモーターの回し方に改良し、電流を抑えることができました。

糀谷あの時は文字通り、しっかり火が出て燃えていたので本当に驚きましたよ。開発陣全員大騒ぎでしたよね。(笑)

藤本本当に驚きましたね。火が出たときは「うわっ!」って思わず声が出ちゃった。(笑) 貴重な試作機が一瞬で燃えてしまったことも、悲しかったです。一つ不具合を解決すると、また次の問題が発生するという感じで、気の休まるタイミングがなかったです。モータ開発がなかなか順調にいかなかったので、電気設計チームも大変な思いをしたと思います。

中村そうでしたね。納期の問題もあるのでソフト開発を機械設計と同時並行で進めなければいけなかったのですが、実機が苦戦している中、テストで組んだソフトウェアのデバック作業がなかなかできませんでした。さらに、ちょうど半導体が入手しづらい時期とも重なっていたので材料の確保も難航しました。問題山積みでかなり不安を抱えつつだったのですが、常に互いのチームの様子を見て、助け合いながら進めましたよね。先ほどの発熱問題もソフトの制御を工夫して、何とかなりました。電気設計チームと機械設計チームが互いにしっかりとしたコミュニケーションを取っていたので前に進めたという感じです。

藤本機械設計チームも中身の設計で結構苦労しましたよね。

糀谷そうですね、藤本さんからハードルの高い要求をもらいましたしね。(笑) まだ中身が確定していない状況で、使用する部品をざっくり伝えられグリップ内部の構造を検討したり…。その他にも発熱問題の解決のため、機械設計では放熱・冷却のための通風等を考慮した新しい内部構造と外観を設計しました。先に開発していたシヤーレンチを踏襲しつつ、ナットランナーの為の新規専用設計が多かったです。大変でしたが、とてもやりがいのある製品でした。

中村すべて順調に進んだわけではないですが、藤本さんがリーダーとして全体をしっかり統括してくれていたので、自分たちのやるべきことに集中できました。それが結果的に問題解決につながり完成まで持っていけました。

藤本機械設計チームも電気設計チームも互いのできる最大限を発揮してくれたので、製品の質も納期も守ることができ、本当に感謝しています。


難航したプロジェクトの進行だが、TONEの開発陣の製品に対する情熱で完成までたどり着いた。
ユーザーの使い心地を常に第一に考えたTONEの製品開発に、妥協はない。
工具の進化は社会の安全と発展にも貢献

藤本コードレス化した2つの製品は、ユーザー様からの評価も良く、スムーズにコードレスタイプに移行できていると思っています。

糀谷コードレス化で電源の制限をうけなくなったことにより、作業性や電圧降下の影響を受けづらくなったなど、ユーザビリティが格段に上がったと思います。

中村社内でも「コードレス化して正解だったね」という声があがっています。また、バッテリーに汎用品を採用したことで他社の製品ともバッテリーを共通化でき、メリットを感じるという意見も多く、私たちの思いが伝わったようでうれしいですね。

藤本今後も引き続き、コードレス製品の開発に注力していきます。「シヤーレンチ・建方1番」「ナットランナー」は完成しましたが、これはまだプロジェクトの途中です。現場での使い心地が向上する可能性がある限り、このプロジェクトが終わることはないと思っています。

糀谷私も同じくまだ途中だと思っています。現在開発が進行中のコードレス製品も多くありますし、今後も今までにラインアップに無かったカテゴリの製品も視野に入れ、ユーザーの皆さんの助けになるような製品をどんどん開発していきたいですね。

藤本コードレス化プロジェクトももちろん続きますが、「トルクの見える化」や「無線データ転送でのスマホ・タブレット連携データ管理」など、今後の目標は他にもたくさん。現在、トラック等の大型車両ホイール装着に最適な電動タイヤレンチで「トルクの見える化」に挑戦しています。コードレスとトルクのデジタル表示で効率的な締付け作業と安全の両立が実現できると思います。

中村大型車両タイヤホイールのトルク管理は、社会的にも重要な問題です。TONEの「電動タイヤレンチ」の作業性向上がこの問題の改善に結びつくと考えています。工具の進化は、社会の安全と発展にも貢献すると思っています。

藤本私たちは先行研究としてIoTやAIなどの最新技術との連携も視野に入れて新しいことを探求しています。現在の社会の流れは非常に早く、変化が激しいです。そんな世の中において、いつでもすぐに要望に応えられるように日々研究と開発を進めていきます。



TONEの製品にかける思いと積み上げてきた技術力が、最高の製品を生み出している。
未来を見据えたユーザーファーストのTONEの製品開発はまだまだ続く。

Webサイトの
フルリニューアル
2023年6月、完全リニューアルされて公開となったオフィシャルwebサイト。
あらゆる人たちからのアクセスがあるwebサイトは、会社の玄関口でありブランドを表す顔とも言える。
TONEのブランド力向上を目指した、webサイトフルリニューアルの裏側をお届けします。